製造業・物流業・建設業において工場施設・保管倉庫・資材置き場は、貴重な資産や在庫を保管する場所であり、その安全性は事業の継続に直結します。しかし、近年では資材の盗難や窃盗事件が増加し、企業が直面するリスクとして深刻な問題となっています。盗難事件が起きた場合、直接的な損失だけでなく、生産の停止や信頼の低下など、多岐にわたる影響が事業に及ぶことがあります。

警視庁の直近10年間の犯罪統計（注１）によれば、侵入盗その他（住居以外）の犯罪の認知件数は2021年まで減少しその後増加傾向に転じ、検挙件数は2022年まで減少しその後増加傾向に転じました。一方、検挙率は2021年まで上昇し、その後下降傾向になりました。これらの傾向から、2022年以降の社会情勢（経済や需給バランスの不安定化）および生活環境の変化（人流の増加）による影響が示唆されます。

こうした状況に対処するために、防犯カメラや監視カメラが有効な手段として注目されています。防犯カメラは、施設内外の動向をリアルタイムで監視し、不審な活動や不正侵入の早期発見に貢献します。また、監視カメラの映像記録は、盗難や窃盗事件の発生時に証拠として活用できるため、事件解決や再発防止に役立ちます。

本記事では、工場や倉庫、資材置き場における盗難対策の重要性に焦点を当て、防犯カメラによるリスクマネジメントのポイントを探っていきます。さらに、PTZカメラ、全方位・パノラマカメラ、赤外線機能や暗視カメラなど、監視カメラの特徴を紹介します。

製造業・物流業・建設業の企業にとって、貴重な資産を守り、安全な作業環境を確保するための参考となりましたら幸いです。

工場や倉庫における盗難窃盗対策は、企業の安全を確保し、重要な資産を保護するために不可欠です。この章では、盗難窃盗対策の重要性について、盗難被害の増加やその事業への影響、そして防犯カメラ・監視カメラがリスクマネジメントに果たす役割に焦点を当てます。

1.1 増加する盗難被害、狙われる資産:

金属製資材の盗難は、工場施設や建設現場における深刻な問題です。特に、銅管や銅線、電気ケーブルなどの銅類は高値で取引されるため、よく狙われます。このような盗難は、生産ラインの停止や工程の遅延を引き起こし、企業に大きな損失をもたらします。

さらに、電動工具や機材も盗難の対象となります。例えば、インパクトドライバー（ネジやビス止めや木材や金属の穴あけに用いられる電動工具）や発電機などは高額で売買されるため、狙われやすいです。これらの盗難は、作業効率の低下や生産性の減少につながります。

また、資材費の上昇により木材などの資材も盗難の対象となっています。このような盗難は、予算の増加や工程の遅延につながります。さらに、事務所スペースから電子機器が盗まれることもあり、経済的な損失だけでなく、機密情報の漏洩にもつながります。

1.2 適切な資材管理と防犯対策:

工場や資材置き場の外部からの侵入に対する防犯対策が不十分であれば、盗難被害を招く可能性が高まります。これらの問題に対処するためには、適切な資材管理と防犯対策が不可欠です。

まずは、在庫管理の人為的ミスと盗難の切り分けが重要です。これらを切り分けられなければ、問題の解決に時間がかかります。在庫管理システムの導入や、異常を早期に検知するための映像監視システムの活用が有用です。

盗難事件が頻繁に発生する施設では、従業員の安全や労働環境にも悪影響を及ぼす可能性があります。防犯カメラの設置や警備員の配置などの対策を講じることで、盗難被害を最小限に抑えることができます。

一方で、従業員や取引先関係者による盗難リスクも考慮する必要があります。従業員は倉庫内の環境や在庫の配置を熟知しており、防犯カメラの盲点や管理者の不在時を狙いやすくなっています。このような内部からの盗難リスクに対処するためには、従業員の監視や出入り管理の強化が必要です。

また、盗難被害が頻繁に発生する場合、従業員の安全や労働環境にも悪影響を及ぼすことがあります。盗難事件は不安やストレスを引き起こし、従業員の生産性やモチベーションを低下させる可能性があります。さらに、盗難事件が暴力事件や犯罪行為に発展することもあり、従業員の安全を脅かす可能性があります。

このように適切な防犯対策と危機管理の意識を持ち、従業員への信頼と監視のバランスも考慮し、適切な防犯対策を講じることが盗難対策として重要です。

1.3 防犯カメラ・監視カメラによるリスクマネジメントの重要性:

工場・倉庫・資材置き場での盗難対策には、防犯カメラや監視カメラの導入が有効な手段として注目されています。防犯カメラや監視カメラは、施設内外の動向をリアルタイムで監視し、不審な活動や不正侵入を早期に検知することができます。また、監視カメラの映像記録は、盗難や窃盗事件の発生時に証拠として活用できるため、事件解決や再発防止に役立ちます。

防犯カメラや監視カメラを導入することで、工場や施設の安全性を向上させ、盗難被害を最小限に抑えることができます。また、従業員の安全や労働環境の改善にも貢献し、事業の継続性を確保するための重要な手段となります。防犯カメラや監視カメラを活用することで、工場や施設内の盗難対策を強化し、リスクマネジメントを効果的に行うことができます。

無人施設や資材置き場などは工場倉庫の防犯対策が不可欠です。特に、組織的な窃盗犯が犯行に及ぶ場合は、その手口や狙いが巧妙化しています。中でも夜間は盗難のリスクが高まります。

2.1 狙われやすい施設・現場の特徴:

交通の便がよい場所:

施設の周辺環境も重要です。窃盗犯が逃走しやすく、犯行を計画しやすい環境にある場所が狙われます。幹線道路沿いや周辺の警察署の場所も考慮し、セキュリティを強化しましょう。

交通量の増減が激しい場所:

不法侵入者にとって魅力的な場所は、交通量が増減が激しい環境です。人や車の出入りが多いと、泥棒が混じってもあまり目立たず、侵入しやすくなります。

郊外に位置する資材置き場:

資材置き場の立地は、安全性に大きく影響します。特に郊外に位置する資材置き場は、人目が少なく、侵入しやすい場所が狙われやすいため、十分な照明や監視カメラの設置で不法侵入を防ぐことが必要です。

無防備な出入口:

施設の出入口は、最も重要なセキュリティポイントです。その出入口付近の施錠機器が簡素なものであったり、警備員が不在であったり監視カメラがないなどセキュリティが脆弱さが安易にわかる状態であると、侵入リスクが高まります。

剥き出しの資材:

資材が見える状態や野ざらしにせず、保管庫に収納することが重要です。保管ルールの徹底、保管スペースおよび施錠機器の定期的な点検とメンテナンスが重要です。

死角が多い場所:

工場施設や保管倉庫、資材置き場では、建物や機械の配置によって死角が生じやすい場所があります。また、保管された資材が密集している場合、不法侵入者にとっては隠れる場所が多くなります。このような状況では、不正な侵入や盗難が容易になります。

工場や倉庫、資材置き場などの施設は、防犯対策を徹底することが極めて重要です。盗難や不法侵入を防ぐために、定期的な点検とメンテナンスを行い、セキュリティシステムを適切に設置しましょう。

環境や用途に合った適切なカメラを選定することが不可欠です。広範囲をカバーする必要がある場合には、PTZカメラや全方位・パノラマカメラが適しています。一方で、夜間や低照度の環境では、赤外線カメラや暗視カメラが効果的です。

3.1 PTZカメラ、全方位・パノラマカメラ:

PTZカメラ（遠隔操作対応カメラ）:

PTZカメラ（遠隔操作対応カメラ）は、映像監視だけでなく、天井や壁面に固定されたカメラの撮影範囲（視野角）をリアルタイムで変更可能です。具体的には、水平方向（パン）、垂直方向（チルト）、および光学的な（画質が劣化しない）ズームを組み合わせて、広範囲のエリアをカバーすることができます。これにより、単一のカメラで広い範囲を監視できます。

PTZカメラの注意点は、PTZで調整された視野角およびズーム倍率の状態でのみ録画されるため、カメラレンズが向いている方向の映像のみ確認可能です。また、カメラが駆動するため本体が高価となる傾向があり故障リスクや設置場所の環境を考慮する必要があります。

全方位・パノラマカメラ（高視野角カメラ）:

一方、全方位・パノラマカメラ（高視野角カメラ）は、広い撮影範囲による映像監視が可能です。具体的には、全方位（360°）、パノラマ（180°）など広範囲のエリアをカバーすることができます。これにより、単一のカメラで広い範囲を監視できます。

全方位・パノラマカメラの注意点は、広範囲の映像を取得するために広角レンズを使用しますが、そのため画質が均一でない場合があります。画像の中心部分は通常、解像度が高く、鮮明ですが、周辺部分は歪んでいたり、解像度が低下していたりすることがあます。映像補正機能を使用しても実映像との差分が発生します。また、撮影領域が広く高解像度でないと詳細を確認しづらいため、データ量が大きくなる傾向があります。

これらのカメラには以下のようなメリットがあります。

即時確認・即時対応が可能:

緊急時や不審な動きを検知した際に、PTZカメラでは、すぐにカメラの方向やズームを調整し、状況を把握することができます。また、全方位・パノラマカメラは、広範囲のエリアを確認することができるため、迅速な対応や緊急事態への対処が可能となります。

少ないカメラ数で広い範囲をカバー可能:

1台で広範囲のエリアをカバーできるため、複数の静止型カメラを設置する必要がありません。これにより、設置するカメラの数を削減し、設置コストを低減できます。

設置場所や設備の節約:

PTZカメラは1台で複数の方向に向けて映像を撮影できるため、カメラの設置場所や設置設備（支柱や取り付け具など）を節約できます。これにより、設置に伴う工事費や設備費を削減できます。

配線や接続の効率化:

複数の固定型カメラを設置する場合と比較して、PTZカメラや全方位・パノラマカメラは1台で済むため、配線や接続の効率化が図れます。配線工事の簡素化や接続ポイントの削減により、設置作業やメンテナンス作業のコストを削減できます。

保守管理の簡素化:

1台で複数の方向を監視できるため、保守管理の簡素化が図れます。カメラの点検やメンテナンス作業が1台で済むため、作業効率が向上し、保守管理コストを削減できます。

3.2 赤外線カメラ、暗視カメラ:

赤外線カメラ:

赤外線カメラは、赤外線を使用して、夜間や暗い場所での監視を可能にします。赤外線を発生させ、それをカメラが検出して映像を明るくします。モノクロとなりますが、赤外線の商社範囲では完全な暗闇での監視を可能にします。

赤外線カメラの注意点は、赤外線（IR）は一般的に赤外線の効果は数十メートルから数百メートルの距離に制限されます。また、赤外線LEDには寿命があり消耗品となります。近くの被写体、ガラス、遮蔽物、レンズの汚れや結露がある場合には赤外線が反射して映像が白飛びして映像が真っ白になる場合があります。

暗視カメラ（低照度カメラ）:

暗視カメラ（低照度カメラ）は、高感度センサーを使用して、低照度の環境（光が不足している状況）での映像を明るくします。これにより、少ない光でも高品質な映像を提供できます。一般的に照明が不足している環境や夜間の監視に適しています（完全な暗闇の環境には対応していません）。

暗視カメラの注意点は、高感度センサーにより画質が劣化する場合があります。特に、非常に暗い場所では、画像ノイズや色の歪みが生じることがあります。また、高感度センサーや画像処理技術などの搭載により、一般的に低照度カメラは価格が高くなる傾向があります。

これらのカメラには以下のようなメリットがあります。

低照度での高画質映像:

赤外線カメラは、完全な暗闇での監視を可能です。暗視カメラは、低照度の環境でも高品質な映像を提供します。不正侵入や盗難が発生しやすい夜間や暗い場所での監視が可能になります。

24時間遠隔監視:

赤外線カメラや暗視カメラを使用すると、昼夜を問わず24時間監視を行うことができます。これにより、現地に警備員を常駐させることなく遠隔監視が可能となります。

コスト削減:

赤外線カメラや暗視カメラは、光が不足している環境下でも高品質な映像を提供することができるため、追加の照明設備や電力消費量を削減することができます。これにより、ランニングコストを削減し、コスト効率を向上させることができます。

工場施設や保管倉庫、資材置き場など、さまざまな環境での盗難対策において、映像監視システムの機能や特性を検討する必要があります。ライブモニタリングや録画機能はもちろんのこと、イベント通知機能など、追加の機能が求められる場合もあります。導入を検討する際には、映像監視システムで問題や課題を解決できるか、自社の環境に適合しているかなど考慮することが重要です。以下は映像監視システム（VMS：Video Manegement System）の主な選定ポイントです。

4.1 ライブモニタリング、イベント通知機能:

ライブモニタリング（リアルタイム監視）は、盗難対策において極めて有効な手段です。カメラの映像を通じてリアルタイムで監視することで、不審者を早期に発見し、犯罪の未然防止につながります。そのため、ライブモニタリングは24時間体制で運用されることが望ましいです。

また、ライブモニタリングは「イベント通知機能」を活用することで、常時画面を確認することなく異常が検知された場合、迅速な対処が可能となります。例えば、カメラが金庫・高額品の保管エリアや夜間の資材置き場などで人（画面上の変化）を検知した場合、管理者に即座に通知されるように設定します。この通知を受けたセキュリティ担当者が素早く内容を確認し、適切な対策を講じることで、被害を最小限に食い止めることができます。

4.2 録画方法・録画機能:

映像監視システムは、単にライブモニタリングだけでなく、録画機能も重要です。万が一の事件や盗難被害が発生した際には、録画映像が証拠となります。適切な録画方法を選択し、必要な期間分の映像を保存できるようにすることが必要です。また、録画データの管理やバックアップ機能も備えておくことで、事件発生時の映像を迅速に確認し、対処することができます。

適切な保存方法を選択することで、重要な映像データを安全に保管し、必要なときに迅速にアクセスできるようになります。まず、映像データの保存場所を選定する際には、セキュリティとアクセス性を考慮する必要があります。映像データをオンプレミス環境（自社保有・自社管理の環境）のサーバーに保存する場合、物理的なセキュリティ対策を強化することで、不正アクセスや盗難から映像データを守ることができます。一方、クラウドベースのストレージを利用することで、データへのアクセスが容易になり、災害や機器故障からの保護も確保できます。

映像データの保存期間に関しては、製造業の一部では法的な要件や業界の規制に基づいて、映像データを一定期間保存する必要があります。過去の映像データを保持することで、事件や事故の調査に役立ちますが、長期間保存する場合は大容量のストレージが必要となります。適切な保存期間を設定し、不要なデータを定期的に削除する機能を使用することで、ストレージの効率的な利用が可能です。

映像データのバックアップを行うことも重要です。定期的なバックアップを実施することで、データの損失や破損から保護し、災害に備えることができます。複数のバックアップ場所にデータを保存することで、データの安全性を高めることができます。

4.3 その他の選定ポイント:

システムの信頼性やハードウェアの耐久性:

映像監視システムは長期間安定した運用が求められます。信頼性の高い製品やメーカーを選択することで、システムの故障や障害を最小限に抑えることができます。また、耐久性のある構造や耐衝撃性などの性能が求められます。過酷な環境下での運用を想定する場合には、特に耐久性の高い製品を選定することが重要です。

予算やコスト面:

高性能なシステムは投資が必要ですが、予算に合わせて最適な製品を選択することが求められます。また、導入コストだけでなく、運用やメンテナンスにかかるコストも考慮する必要があります。コスト面においてもコストパフォーマンスを考慮し、長期的な視点でシステムを選定することが重要です。

運用とメンテナンス:

システムの導入後も適切な運用を行い、定期的なメンテナンスを実施することで、システムの安定性や信頼性を維持することができます。運用担当者やメンテナンススタッフのサポート体制も整えることで、効果的な運用とメンテナンスを実現します。これらの要素を考慮し、適切な選定を行うことで、映像監視システムの効果的な導入と運用が可能となります。

UI（ユーザーインターフェース）:

映像監視システムのUI（ユーザーインターフェース）は、操作性や使いやすさに直結します。直感的な操作が可能なUIを持つシステムを選択することで、管理者や運用担当者が効率的に作業を行うことができます。運用環境に適したユーザーフレンドリーなUIを持つシステムを選定することで、運用効率の向上に貢献します。

工場施設や保管倉庫、資材置き場における盗難対策は、経営や資産管理において重要な課題です。本記事では、防犯カメラの活用に焦点を当て、その重要性や導入ポイントについて解説しました。

盗難被害が増加している現状において、防犯カメラ・監視カメラがリスクマネジメントにおいて不可欠な役割を果たすことが重要です。

用途・環境に適したカメラに関しては、PTZカメラや全方位・パノラマカメラ、赤外線カメラと暗視カメラなど、さまざまなカメラの活用方法について解説しました。これらのカメラを活用することで、盗難や不正侵入を早期に発見し、効果的に対処することが可能です。

映像監視システムに関しては、ライブモニタリングや録画再生など、映像監視システムの導入における重要ポイントを紹介しました。適切なシステムの選定と導入を通じて、効率的な監視とセキュリティの強化を実現することができます。

防犯カメラの活用は工場や倉庫、建設現場の盗難対策において不可欠であり、経営リスクを最小限に抑えるための重要な手段となります。今後も企業における防犯カメラによるセキュリティ向上は、安定的な事業運営に欠かせない取り組みであると言えるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございます。